地下水・湧水と品質管理:土工
(1) 技術的な課題 ( 7行 )
本工事は、擁壁工と排水路(ボックスカルバート)を布設し、盛土により路床までを形成する、県道の拡幅工事であった。
現場は谷あいに位置し、湧水が非常に多い場所であった。掘削時にはすでに基礎地盤の軟弱化が発生し、構造物を布設する位置では、埋戻・盛土による路床部の強度確保が求められていた。
このような、湧水箇所での埋戻・盛土の精度確保が、品質管理上の重要な課題であった。
(2) 検討した内容 ( 11行 )
埋戻・盛土による路床部の強度を確保するため検討した内容は、次の通りであった。
① 軟弱化した基礎地盤を改良する方法として、安定処理工法と置換え工法などについて、強度・経済性・環境面から比較検討を行った。
② 擁壁背面の排水を促進する湧水対策工について検討した。
③ 布設間隔の狭い構造物間の埋戻は、埋戻材料や埋戻方法について検討した。
④ 盛土部にさいては、トラフィカビリティを碓保する方法、
湧水対策としてのサンドマット(敷砂層)、地下排水溝や排水管など、排水処理の必要性について検討した。
(3) 対応処置 ( 7行 )
① 軟弱化した基礎地盤はセメント系固化材により改良を行い、所要の支持力を確保した。
② 湧水対策として、擁壁背面沿いにφ150の有孔管を地下排水溝として埋設し、粗目の砕石を巻き立て、排水の促進を図った。
③ 間隔の狭い構造物間は、砕石で埋戻し、タンパで十分締め固めた。④ 盛土部は、各層の仕上り厚さが20cm程度となるように薄層に敷き均し、振動ローラーで念入りに転圧を行い、堅固な路床部を形成した。
仮設工:工事用道路
(1) 技術的な課題 ( 7行 )
当初の設計では、西側の林道からの工事用道路が計画されていたが、植林の区間を通るため、伐採が必要となり、地権者から合意が得られなかった。そのため、新たな工事用道路のルート検討が必要になった。また、新たに検討する工事用道路は長大盛土になると予想され、山側からの雨水の流入や湧水処理が懸念された。
このような工事用道路のルート選定と、盛土接合部の排水処理が、本工事における仮設工の最も重要な課題であった。
(2) 検討した内容 ( 11行 )
工事用道路のルート選定のため、検討した内容は次の通りである。
①工事用道路の線形については3案を比較してルート検討を行った。A案は、既設林道を上流部まで利用するルートで、道路勾配I=14%、延長L=240mである。B案は、既設林道の下流部から道路を新設するルートで、道路勾配I=15%、延長L=300m、工事費が最も高くなる。C案は、AB案とは別の道路から計画するルートで、道路勾配I=16%、延長L=260m、盛土量が少ないため工事費が最も安くなる案である。
②道路は盛土区間が多くなるため、接合部に透水性のある排水層を設けるなど、雨水の流入と湧水処理工法の選定について検討した。
現場で次のような処置を講じた結果、地権者の了解も得られ、所要の品質が確保でき、工事は無事完了した。
(3) 対応処置 ( 7行 )
①地権者の了解が得られたことを発注者に確認し、既設林道を最大限に利用できるA案のルートで工事用道路を設置した。表層工はt=10cmの路盤工とし、工事終了後の復旧が容易にできるように考慮した。
②道路両側の盛土と地山の接合部には、砕石による透水性のある排水層を設け排水路を設置して、雨水の盛土内での滞留を防止した。
③砂防河川を横断する箇所には、当該地域の降雨強度から必要水路断面を計算し、ヒューム管HP-600と鏡壁工を設置した。
仮設工:仮締切
(1) 技術的な課題 ( 7行 )
本工事は、S川の下流部右岸側に、大型ブロック護岸及び歩道を新設する工事であった。仮締切を計画するに当り、S川での流量観測データはなく、仮締切の断面や工法の決定根拠が問題となった。また、S川の下流部は住宅が密集しているため、河川工事による水質や騒音振動の影響が懸念された。
このような仮締切の断面や工法の決定と、水質や騒音振動への対策が、本工事における仮設工の最も重要な課題であった。
(2) 検討した内容 ( 11行 )
S川の仮締切について、次の内容の検討を行った。
①S川での観測データはなかったため、S川近傍のK川T観測所の過去5年間の最大水位、最大流量より、仮締切の断面を検討した。
②仮締切工法については、自立式鋼矢板土留め工の選定を検討し、近隣の土質条件から、使用鋼材、根入れ長について検討した。
③鋼矢板の打込みについては、打込む矢板の数量、形状寸法、土質、施工場所の地形、作業環境および矢板の根入長さなどを考慮し打込む方法、打込み設備、使用機械を検討し選定を行った。鋼矢板打込み工法としては、施工場所の条件であるN値=4(粘性土)、汚濁水の影響や連続振動による影響を及ぼせない環境であったため、油圧式圧入工法の採用を検討した。
(3) 対応処置 ( 7行 )
①近傍のT観測所のデータから、S川の対象水位はH=5.0m、計画流量は流域比から換算してQ=5.1m3/sとして、仮締切の断面を決定した。
②自立式鋼矢板土留め工は、土質条件のC=25kN/m2、N値=4(粘性土)から、鋼矢板Ⅲ型SYS295を使用し、根入れ長は7.0mに決定した。
③鋼矢板の建込みは油圧式圧入工法を採用し、鉛直性を直行2方向から検測し慎重に打ち込み、所定の深さで水平性を検測して打ち止めた。
以上の結果、鋼矢板の打込みによる濁水や振動の影響もなく、所要の品質が確保でき、工事は無事完了した。
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